2017年5月13日

自分の部屋から夜の外にレンズを向けた写真をどこかで見た気がした。
思い至ったのは木村伊兵衛翁である。
晩年、体調が思わしくない頃、自宅の部屋から外を撮影した写真を思い出していたのだ。

漫然とした重苦しい憂鬱。
体調をおかしくしていると、ずんと心に重しを乗せたような気分になることがある。
窓の外を見ると夜の闇が広がっている。
自分が、その闇の中に沈み込んでいくような感覚に見舞われる。
闇のひんやりとした感覚。
その暗闇を覗き込む時、ふとニーチェの「怪物を倒そうとする者は、自らが怪物とならぬよう気を付けよ。お前が深淵を覗くとき、深淵もまたお前を覗いているのだ」という言葉を思い出す。
これは怪物を倒すくらいの力を持った時、自分も怪物となりうるのだ、という意味だが、暗闇を眺めていると、その奥から何かがこちらを見つめているような錯覚を起こす。

木村翁が何を思っていたかなどは分からない。
しかし、その写真から感じ取った「ひんやり」とした冷気は、たった今僕も感じることができる。

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